報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2019.2.1]

今月のうた・ことば

二月のことば
 よしあしの種まくほどは見えねども
 春たつのべにこころせよ人

 この歌は「積小為大」の歌です。「積小為大」は良い方面の「小」を積むように、とのおしえとして使われることが多いですが、この真理は逆もまた然りであり、そのことを戒める歌となっています。「のべ」とは漢字で「野辺」と書き、「野原」と同じ意味です。今蒔いた種が良い花を咲かせるのか、そうではないのかは蒔いた時点では分かりません。良い種を蒔けば蒔いた分の実りを得られますが、悪い種を蒔けば蒔いた分の報いを受けることとなります。現在の言動が将来どのように返ってくるのか、我々は心して慎まなければなりません。
さて、尊徳先生の道歌には、儒教の教えを農民たちに分かりやすく教えるため、農作業を例にとったものが多く見られます。この歌の詞書(ことばがき:歌の意図を簡潔に説明する文章)には、『易(えき)経(きょう)』の一節が採られています。あの『三国志』の劉備玄徳が、その死に際し、我が子劉(りゅう)禅(ぜん)へ遺したのもこの言葉でした。ここにその現代語訳を紹介します。
『人間は、毎日の小さな良い行いを積み重ねることではじめて、素晴らしい人間になれるのです。悪い行いも、これを何度も繰り返すことがなければ、身を滅ぼすまでには至りません。しかし、小さな人間というのは、 小さな良い行いは、こんな小さなことは意味がないと考えてこれを行わず、 小さな悪い行いは、こんな小さなことなら構わないだろうと、繰り返し行ってしまいます。これが積み重なってあなたの身を滅ぼしてしまうのです。』
 「積小為大」は主に勉強面・スポーツ面で、「コツコツ努力を積み重ねる」という意味で語られることが多いと思います。もちろんその理解でいいのですが、「こんなことをして何になるのだろう」という驕(おご)りと、「これぐらいならいいだろう」という甘えを戒めるおしえでもあるのです。さて、頭髪服装指導のときに、このような考えが頭をよぎることはありませんか。前日の夜、当日の朝、鏡の前で自分に問いかけてましょう。

←戻る

ページトップ