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[2022.3.1]

今月のうた・ことば

三月のことば

苦と楽と花さく木々をよく見れば
 心の植ゑ((え))し実の生えしなり

この歌は、「苦や楽といった花が咲く木々をよく見てみると、それは己の心が植えた実(種)が生育したものである」という意味である。植物は、種から草・花・実と生育していくが、どのように成長するかは環境によって左右される。しかし、どのような環境にあっても、米が麦になることや、梅が桜になることはない。このようなことは、人間の心にもあてはまる。つまり、現在の自分を直視することにより、自身の置かれた状況は過去に自らまいた種が生育した結果だと反省させられるという意味になる。尊徳先生は、このような意味の歌を他にもいくつか詠まれており、原因と結果(因果)に基づく反省をすすめている。だが、私たち人間の感情というものは、自分の行動を良いと認めてしまいがちであり、反省することは少ない。例えば、道路で石などにつまずいたときには、道路工事が悪いと言い、物を落とした際には、それがすべったと言うなど、自分の責任を回避してしまう。このことは、人間関係においても同様であり、自身の非を認めるのではなく、相手の非を責め、それにより自身の面目を保とうとする。人の感情として仕方ないことかもしれないが、尊徳先生はこれを解決する方法のひとつとして、「善行表彰」をおこなった。他人の悪いところに目を向け、非難するのではなく、よいところに目を向け、それを称賛することで人々の意識を変えようとしたのである。「人の振り見て我が振り直せ」という言葉があり、私たちはこれを意識するときに他人のよくない面に目が行きがちになるが、尊徳先生は、まず他人のよいところに目を向け、自身を見つめ直していくことが肝要だと考えていたわけである。互いのよくないところばかり見ても仕方がない、よいところを見て、自分自身が変わることで周囲もよくなっていく。それは人間関係にとどまらず、社会全体においてもいえるのではないか。21世紀を生きる私たちであるが、今一度このことばを深く受け止める必要があるのではないだろうか。

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