報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2016.4.7]

今月のうた・ことば

四月のことば
  報徳敬物
徳にむくゆる心をもって 物は大事に始末よく

4月になり新年度の始まりと共に学園も多数の新入生を迎えました。在学中には様々な機会を通して報徳のおしえを理解し、身につけ、そして実践していただきたいと思います。
報徳学園の校名は、論語にある「以徳報徳」に由来します。「徳を以て徳に報いる」と読みますが、まず「以て」の意味がわかりにくいのではないでしょうか。私は「よって、使って」と置き換えて考えます。周囲の人やものなどから徳を受けたときには、自分のもつ徳を使ってこれに報いるというのが以徳報徳です。
それでは徳とはどういうことなのでしょうか。徳という言葉は、一般的には道徳的で特別立派な人だけにあると見られてきましたが、報徳で言う徳は独創的で、世の中のあらゆるものに、それぞれ固有の徳があると考えます。もの・人に備わっている個性的な「持ちまえ、とりえ、長所・美点、価値、効用、恵み、おかげ」などを「徳」として捉えています。
私たちは天地自然の恵みを受け、両親の手厚いお世話により、そして家族や地域社会、学校など様々なところから影響を受けて生きています。これら全てを「徳を受けている」と考えます。
恩を受ければ感謝の気持ちを持ち、お返しするのが人の道です。私たちは、周囲のあらゆるものから徳を受けてはじめて存在するので、この徳に報いなければなりません。報いるにあたって自分の良さ、特性を使って報いるのが報徳です。
さて、私たちは学園で様々なことを学びますが、その基本は教室であり、机やロッカー、また、グランドなど、学校の施設・設備です。あるいは教科書やノート、筆記具等の学用品があって初めて「学び」は成立します。もちろん先生方のご指導があってのことですが、学校の設備や学用品は全て「もの」であります。一人ひとりの人間や命を大切にするのは誰しもわかっていることですが、今一度「もの」を大切にすることに心を致したいと思います。
もの自体は生命体ではありませんが、元「命」という場合があります。革のベルト、革の鞄、絹糸、全て動物から作られています。木綿や竹製品、木製品、植物からできていますが、植物も命です。教室の床も机も鉛筆も木が使われております。
金属でできたものや陶器できたもの、その他ざまざまな材質のものがありますが、なるほど生命体ではないのですが、有史以前からの長きにわたり、無数の人々の努力と英知の結晶としてものは存在します。時計やカメラなどの精密機械、コンピューターや高速鉄道と言った最先端技術を駆使したもの、校舎や体育館などの建造物、どれをとっても自分一人で作ることは不可能です。見えないところに人々の努力があります。天地自然の恵みがあります。皆さんには、こういったことをも有難いと感じる、感謝の心を持っていただき、それに報いる人間になってほしいと思います。ものを大切にするというのは、「報いる」ことの基本であります。
今月のことばは、本校の創設者、大江市松翁のことばであります。学園創設にあたり、報徳のおしえを身につけた、世に有為な人材の育成を目指された市松翁ですが、そのお気持ちを考えても、まずは学園での「学び」の基本となる全て「もの」を大切にする気持ちを持っていただきたいと思います。

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