報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2015.10.9]

今月のうた・ことば

十月のことば
  三才の徳
  我が道は天地人三才の徳に報いるにあり。

報徳講話の授業等で「恩を受けると、どうしますか」と尋ねると、ほとんどの生徒が「恩返し」と即座に答えてくれます。とても嬉しいことです。「恩」を「徳」と読み替えると「徳を受ければ、かならずその徳にお返しをする」、つまり「徳に報いる」となります。
「天地」を「天地自然」、つまり「大自然」と解することもできますが、それは同時に天体の運行から全宇宙のあらゆる現象を司る自然の摂理とも考えられます。尊徳先生はこれを天道と呼びました。一般的にはお天道様と言いますが、この世を作りたもうた「開国の神」と解しておられたのではないでしょうか。
そもそもこの開闢=天地創造がなければ我々の存在もありません。天の徳に感謝し、報いるところに人道が生まれます。しかし、天の恵みはあまりに普遍的すぎてついついそのありがたさを忘れてしまいます。だからこそここに心を致して天の徳を再認識し、この徳に報いることを考えるべきなのでしょう。
私たちの衣食の基本は大地にあります。穀物や果物、お肉もお魚も天の恵みと共に大地の恵みによって生み出されます。人間に限らず全ての動物は他の生物の命を奪って自らの生命を維持します。万物が単独では存在できず、周囲のあらゆるものから影響を受けて存在できるのであり、これが徳を受けているということなのです。だからこそ大地の徳にも報いるのが人の道、人道です。机を並べて共に勉学に励むクラスメートも、レギュラー争いをする部活のライバル部員も、相手チームの選手も皆、様々な形で私たちに影響を与え、これに前向きに対処しようとするところに自らの成長が生まれます。このように考えると、「いやなこと」も「つらいこと」実は自分を成長させるチャンスであり、あらゆるものへの感謝の気持ちと徳に報いることが成長カギとなります。
尊徳先生は天地自然の恵みと共に、国家や家族の恵みも強調されました。第35代アメリカ合衆国大統ジョンFケネディの名言に「国家に対して何を望むかよりも、自分が国家に何を奉仕できるかを考えるべきである。 Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country」があります。二宮翁夜話の次の一節はこれと相通ずるものがあります。
今年の物を来年に譲るも譲なり。則ち貯蓄を云ふ。その他親戚にも朋友にも譲らずはある可からず。村里にも譲らずはある可からず。国家にも譲らずはある可からず。資産あるものは確乎と分度を定め法を立て能く譲るべし。
譲るというのは徳に報いることであります。国民一人ひとりが国を支えているという意識を持てば、その為に例えば資産を、あるいは労力を、あるいは智慧を譲ることになります。何と言っても親あっての自分であり、親戚や友人あっての人生です。あらゆる人の恩徳に報いる生き方が、自分を、そして人を幸せにすることです。天地人三才の徳に報いる生き方を追求したいと思います。

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