報徳学園は、1911年(明治44年)神戸御影の実業家として活躍していた大江市松翁によって創立されました。
その頃日本は、日露戦争に勝利し、人々のおごりや高ぶりが頂点に達しようかという時代であった。
翁は軽佻浮薄に流される現状をみて憂い、このままでは日本は滅んでしまうと危惧し、地に足をつけた質実剛健の、そして感謝と思いやりを知る若者を育てなければならないと考え、日頃から二宮尊徳先生を敬愛し、その教えである報徳主義を実践されていました。 それゆえ「以徳報徳」の精神を身につけた青年を育成したいと願い、神戸御影の地に3年制の報徳実業学校を創立されたのが始まりです。
報徳学園理事長の大江透でございます。 私は報徳学園の校祖であります大江市松の孫ですが、今まで中学・高校教育には携わった事はありませんでした。
ただ、岡山大学の医学部で学生を教えていた関係で、学生を良い社会人として育てるには大学教育では手遅れである事を感じていました。 また、5年前に報徳学園の特別顧問として報徳学園の理事会や評議員会に参加させてもらってから、ますます中学・高校教育の大切さを痛感しました。
報徳学園の教育理念は二宮尊徳の報徳思想を柱としていますが、この思想は現実的で今日でも通用するものです。 実際、今日この教えを経営思想として事業に取りこんでいる会社経営者も少なくありません。
また、世界でも報徳思想と似通った人生哲学を持って活躍している人がいます。 一例をあげれば、ビルゲイツはポリオ撲滅運動始め色々な分野に多額の寄付をしていますが、これは利益の一部を社会に還元するという彼の人生哲学に基づいて行っていると聞いています。
また、ヨーロッパの有名なピアニストが、なぜ演奏をするのかとの質問に、自分がピアノを上手に引けるのは自分だけの力でなく、神様から授かった才能、ピアノを教えてくれた先生、さらに自分を育ててくれた社会のお陰であることを常に思い、ピアノ演奏をすることで人々に感動を与えて社会に恩返しをしている、と答えていました。 この様に、自分を育ててくれた両親・恩師・社会に感謝し、会得した技術・知識・能力で持って社会に還元するという行為は、まさしく以徳報徳を実践していると言えます。
報徳学園は、この以徳報徳の考えを学生に教えるとともに、将来、生徒が社会に貢献出来るような人になる為の技量・知識・知恵・能力を身につけさせる事を、教育目標としています。これには、生徒一人ひとりの優れている所を見いだし、その才能が伸張するように叱咤激励する必要があります(至誠勤労を実践させる)。 さらに、生徒同士の交流を推奨し、お互いの優れている点を認め合うような心(分度推譲の心)を養わせたいと考えています。 これらを実践することにより、校風三則である 1)以徳報徳、 2)至誠勤労、 3)分度推譲の精神と伴に、社会人として必要な技量・知識・知恵の基礎を身につけて、将来、社会から必要とされまた敬愛される人に育つように教育したいと考えています。報徳学園で学ぶ生徒が一人でも多くこの目標に近づく様に、理事、評議員、同窓会、推譲会および教職員の皆と一緒にがんばりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
令和3年(2021年)4月、報徳学園中学校・高等学校の第19代校長に就任しました元田利幸です。
生徒諸君には「人は一人では生きられない」「多くの支えで、今がある」と伝えています。それは、より良く生きるために感謝の念を抱いてもらいたいからです。また、二宮尊徳先生の教えを建学の精神として学ぶことで、自らの夢や目標を実現する営みの先に、社会で活躍する人、社会に貢献する人に成長してもらいたいと考えています。
新型コロナウイルスは、幼い子供たちにもよりよい社会の実現には地球規模で考えることの必要性を認識させました。高い志を抱く報徳学園生には、人類が直面する様々な困難に立ち向い、明るい社会を築く中心的な存在に成長してくれることを期待しています。