校長より

中学高校 [2021.12.13]

本校高校Ⅱ年生の新聞を読んでの感想文コンクールから

去る11月19日(金)の神戸新聞26面総合の記事に「第12回ひょうご新聞感想文コンクール(神戸新聞社、神戸新聞販売店会主催)の審査結果が発表されていました。 同コンクールで本校 高校Ⅱ年 片瀬奏磨君が兵庫県知事賞を受賞しました。片瀬君は昨年同コンクールにおいて優秀賞を受賞しており二年連続の受賞でした。

以下にその新聞感想文を紹介します。

「戦争は二度と起こしてはいけない。」これは、この夏の僕の経験から強く実感し、深く心に刻み込んだ言葉だ。被爆者の平均年齢は83歳を超えている。もう時間がない。                                 被爆者代表、岡信子さん92歳「語り継ぐ いのちある限り」の記事で、岡さんは「原爆の恐ろしさを伝えるため、この年まで生かされた、命ある限り戦争体験談を語り継ぎ、核兵器廃絶と平和を訴えていく。」と誓われた。夫や子にさえ被爆体験を話せなかったという。被爆したのは16歳、今の僕と同年齢だ。想像を絶する凄惨で残酷な体験を言語化することの精神的な困難さ、沈黙を破り語られた言葉の全てが僕に響く。きっと澱のように常に心の底にたまり、76年間苦しんだに違いない。                                        同じ8月9日早朝、全国から参加した約70人の高校生の中に僕もいた。原爆落下中心地碑を囲む人間の鎖をつくり平和を祈念した。                

僕は兵庫県の平和大使サポーターとして長崎に三日間派遣され、貴重な被爆体験を聴き、長崎の高校生の解説で原爆遺構も見学した。被爆当時の地層がそのまま保管されている場所では、僕達の歩いた地面の下に、当時生活していた人々のお茶碗や瓦などの生活用品、骨さえもある。その上に普段生活する層があり、復興工事で埋め立てられたものだ。胸が詰まり、言葉で表せない感情になった。その後、原爆資料館、追悼平和祈念館を訪れた。最終日、若者早朝集会として爆心地公園で人間の鎖、高校生平和宣言を行った。                                   三日間で出会った全国の仲間とSNSを通じた活動が始まり、海外の平和大使との交流も決定した。平和の輪を世界に広げていく。                      

122か国が支持する核禁止条約に唯一の被爆国である日本は批准していない。発効から3年目の生まれたての条約は、僕達の世代が育てる。核抑止力として核は必要だといわれるが、危険を増幅させるものであり、どんな理由であれ核の保持、使用は絶対に許されない。                         今年6月時点で、世界には13130発の核がある。喜ぶのは核が残りの一発になったからではなく、全廃してからだ。「長崎を最後の被爆地に」を被爆者の強い願いだ。                                              僕の氏名と取材内容がNHK電子版に掲載された。記事への最初のコメントは伝えたかった平和のことではなく、どこの高校生か、高校生が利用されている、高校生に何ができるのか、という内容だった。とはいえ、恒久な平和の願いは皆が持っているだろう。だが、戦争について深く考え、行動する人は少ない。成果は行動についてくると信じ、僕達高校生から行動に移すきっかけを作る。僕達の世代は戦争経験者から直接話を聞ける最後の世代だ。だからこそ、戦争経験者から学び、平和のバトンを受け継ぐ責任がある。                                       世界中から核兵器や戦争がなくなる日が来ると、平和が当たり前になり、「戦争」や「平和」という言葉が忘れられるだろう。その日が来ることを願い活動を続けていく。岡さんのように、命の限り受け継いでいく。

その日たまたま、新聞発表の日から感想文を見せてもらおうか迷っていた私の前を片瀬君が通り過ぎたので、声をかけて感想文をお借りしました。新聞発表が12月中旬とあったので、それまで待つつもりだったのですが、戦争や核についてはこの職業を選択したときから生徒とともに考える機会をいただいていたので、わが校の生徒が受賞した感想文をどうしても早く読みたいという衝動にかられてしまい、声をかけたのです。
受賞感想文をお借りした翌朝「“空白の10年”被爆者の闘い」というテレビ番組を観ました。広島に投下された原爆で被爆された阿部静子さん(当時18歳)は番組最後で「被爆者の私が傷をさらしているのは、この世に役立っていると信じているからです」と語っておられました。被爆による苦痛のみならず、近くの存在から人権を侵害された阿部さん。人権週間(法務省12月3日~10日)が終わりました。改めて、夏、終戦間際だけでなく、私たち皆の人権を考えてみませんか?命はつながっています。しあわせもつながっています。私の命も然り、顔も名も知らない人ときっとつながっているのです。誰かのしあわせが、あなたのしあわせとつながっているのです。

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