トップページ【最新TOPICS】※今後使用しません

[2021.3.1]

今月のうた・ことば

三月のことば

花さけば老(おい)も若きもへだてなく
 詠(なが)めにさそふ春の山かな

 この歌は、一見すると「花が咲けば老若男女がながめようとして集まる」という平凡な意味に捉えられる。しかし、尊徳翁の考えはそう単純ではない。一年間の生活のなかで勤むべきことをつとめて怠らなかったために徳が積み重なり、その結果、花となって結実した。誰もが賞美する徳行がなければ、春が来ても花は咲かず、秋になっても紅葉にはならない。尊徳翁はこの意味を強調して、「徳は孤ならず、必ず隣あり」という論語の一節を持ってきて歌の題としている。このことから、題の意味もあわせて考えることが必要であろう。「徳」、言い換えれば「よさ・とりえ」というのは全ての人やものが有しており、それは千差万別である。それぞれが持つ徳を伸ばしていき、ついには世のため人のためにそれを還元していく。その行いは、ただひとりのみに限定されるのではなく、家族や隣人などに影響を及ぼし、広がっていくものである。つまり、この歌は、「梅・桃・桜などの花を咲かせる木々のみならず、春の七草など様々な草木が一体となり春の山のながめを構成している。そのながめは、個々のもつ美しさだけでなく、それらが渾然一体となりその風景をつくりだしている。それは、各々の徳が相互に影響しあって生み出された結果である。だからこそ、老若男女問わず人々はその美しさを観賞し、感動するのだ。」ということになる。
 三月は、学校生活において一年間の総決算となる時期である。この一年間を振り返ってみて、「自分の生活はどうだったのか」ということだけではなく、「自分が友人や先生など周りの人の行いを見て成長した部分は何だったのか」、「自分の行いは周りにどのような影響を与えていたのか」ということもあわせて考えてみよう。そうやって各々が自己を見つめなおすことによって、クラスやチームといった自分たちが所属する集団がさらに向上するのではないだろうか。

←戻る

ページトップ