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[2022.8.1]

今月のうた・ことば

八月のことば
 春の野にめだつ草木をよく見れば
  さりぬる秋に実るくさぐさ

この歌は春を詠んだ「推理の歌」とあります。春にはきっとこうなっているであろうと、野に咲く草木全体を詠んだ歌です。春の野に芽立つ草木は、去年の秋に実った種が生えたのであり、春の草木は秋の草木の実が原因であり、草木の芽の出るのはその結果です。その原因が結果を結び、また結果が原因とつながり、原因と結果とが連続して輪廻(りんね)(繰り返すこと)します。その因果の関連し輪廻する現象が生命の実体である、と尊徳先生は唱えます。万物が因果の関連によって輪廻する所に認められ、体験し、自覚する生命は、その生きる所に時間と空間を意識することができるわけです。この歌はこれを感覚する所の帰(き)趣(しゅ)(行きつくところ)であり、その意味において極めて具体的な歌であると同時に総合的な概念の表現でもあります。総合的な意味を持つ点においては優美さも合わせ持ちます。
もし皆さんが日常の生活において、幸福でありまたは不幸であると感じた時、その事実の原因を振り返ってみると心は安定するでしょう。あるいは春の野の草木を見て、その由来を明らかにし、また将来を予想しうるように、現実の生活それ自体を安らかに味わえるでしょう。
 皆さんがこの言葉を目にする時期は、夏休み真っ只中。しかし、暦の上では秋にさしかかる時期です。来年の春に実りを期するならば、その結果に由来する原因はまさにこの時、「今」につくられるわけです。ひと夏を超えようとたくましく成長している皆さんにこの歌が伝えるのは、「この夏を超えて満足するのではなく、さらに次の春に向けた種を今この時から播(ま)こうではないか」というメッセージではないでしょうか。
 そして来春に向けて勝負をかける受験生の皆さん。この夏に大量の肥料と種を播いていると推察されますが、なかなか秋の実りに直結しないのが現実かもしれません。しかし、この歌が示唆する原因と結果の輪廻は、この秋の踏ん張りが春の芽生えに繋がることを、尊徳先生は時空を超えて伝えています。皆さんには身長180センチ 体重94キロの偉大なる応援団長がついています。今日からの一歩を今の結果に一喜一憂し過ぎずに、また踏み出していきましょう。

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