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[2022.10.1]

今月のうた・ことば

十月のことば
見渡せば遠き近きはなかりけり
     己れおのれの住みかにぞある

 二宮尊徳翁(おう)の思想に一円観といって、自分の立場から一方的にものを見るようなことはせず、対立するものも含めて一つとしてみるという考え方があります。吉凶好悪や善悪、敵味方も、円の半分で相対的なものですし、他にも地上の木や花は見えても土中の根は見ることはありません。絨毯なども表ばかりが見え、裏は見ることができません。自分に都合の良い面だけにとらわれて、もう一方に立つ人の立場が見えなくなると、対立衝突し、論争し、闘争し、建設的な行動をとることが難しくなります。一つの円の中に入れてとらえることを大切にして、友好的で発展的な考えを持ってみましょう。性別、人種、国籍、宗教などの価値観の相違が理由で、人の社会が分断されることは、とても悲しくあり非生産的です。これからの新しい世界を築いていく上で、一円観はとても重要な考えであるといえます。
また、二宮翁は農村の復興を行うときに、「芋こじ」の原理を引用し、頻繁に農民同士での会合を持ちました。人と人との交わりを活発にすることで、意見を交換したり、体験を発表しあったり、互いに練磨しあえる環境ができました。相手の立場、自分の立場、互いに持っているものを出しあい、互いに教育しあい、そういったことがスタンダードになってくると皆の意見が一致し、どんどん難しい問題を解決し、復興を果たしていったようです。このように、「芋こじ」の心と心のふれあいの中から、人として持つべき規範や果たすべき義務の必要性を認識すれば、自然と自分の小欲を抑えることができるとともに、世のため、人のために尽くそうとする大欲が生まれてきます。各自がこの自覚のもとに融和し、団結してことにあたれば、いかなる難問も問題ではありません。
自分自身も一円の中の一人に過ぎません。人は人と関わるために生まれてきています。どんな屈強な人でも一人では生きていくことすらできません。多くの人に支えられ、隣の人の手を取り支え、それで世界は成り立っているのです。多くの人と関わり、相手の立場を考えましょう。多くの社会に所属し、様々な価値観を知りましょう。そういった経験が自分の徳を磨くことになります。自分が磨かれるということは、周囲の人を磨いていることにもつながります。社会に良い影響を与えることができる人になっていってください。

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