トップページ【学園・クラブTOPICS】

[2023.3.1]

今月のうた・ことば

三月のことば
 山々のつゆあつまりし谷川の
          ながれ尽きせぬおとぞ楽しき

 
あちこちの山々の草木や苔(こけ)の中に含まれる露の一滴ずつが集まって流れ、小さい谷から大渓谷に集まり、あるいは滝となり、淵となり、平地に至り大河川となる。それが太古から未来永劫にわたって続く。その尽きないところを思えば楽しいことである。
この歌は、雄大な自然の情景を詠んだものである。しかし、この歌を二宮尊徳先生が詠まれたということを踏まえて、その解釈をする必要がある。尊徳先生はその後半生を農村復興に捧げた。そこには多大な苦労があり、様々な工夫を以て復興を成し遂げた。この道歌を、そのような視点から解釈してみよう。
この露(つゆ)というのは、十分間の勤労からできたものや日々の生活に悩むほどの貧困者が産み出した財など、塵(ちり)ほどのわずかなものである。だが、そのようなものでも皆がこれを積み重ねていけば、大渓小谷をながれる川の水のように集まる。集まった小財物を年々自然と谷底に集まる水のように蓄えていけば、他の財を借りずとも、村の人々を救うことができる。それらが毎年続いていけば、規模が拡大・安定し、多くの人々が救われるという喜ばしいことになる。つまり、この歌は、報徳仕法の神髄ともいえる内容を詠んだものだといえるだろう。
人間は一人で生きていくことは難しく、そのために社会を形成している。そのような社会の中で、私たちは報徳学園に身を置き、学校生活を送っている。その谷川に私たち一人ひとりがどのような露を垂らすことができるのか、また、一滴ほどの露を生み出すことができているか、年度末という節目にあたって自身を振り返ってみてはどうだろうか。

R05+3月のことばs

←戻る

ページトップ