報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2018.10.9]

今月のうた・ことば

十月のことば

商法は売りてよろこびて
買いてよろこぶようにすべし

 商業とは「生産した品物や仕入れた品物を売って利益をえる事業」(『明鏡国語辞典』)ですが、大きな利益を得る為には、少しでも安く仕入れて少しでも高く売らなければなりません。これが行き過ぎると粗悪なものでいかに素晴らしいものとして販売するか、というところに目が向き、社会的に様々な問題が生じています。また、商品を仕入れるときには仕入れ値を少しでも安くしようという気持ちが働くのは自然かもしれません。しかし、これが行き過ぎると、生産者は採算が合わなくなり、苦しめられることになります。
 第2次世界大戦後、東欧諸国は経済的に大変苦しい状況にありました。そこでヨーロッパの先進国は、通常の国際市場価格よりも高めに設定した価格で、継続的に農産物や手工業品などを取引し、発展途上国の自立を促すという運動を展開しました。これをフェアトレード「公平取引」といいます。国や地域により市場価格は異なります。元々価格の安いところからさらに仕入れ値を安くして取引するのではなく、経済的に余裕がある分、先進国が逆に高値の価格で購入すれば売った方にはそれだけ大きな利益が生まれます。この価格は先進国にとっては決して高いものではありません。こうすれば売った方も買った方もともに「よろこぶ」ことができます。さて、このフェアトレードという考えの裏側には、報徳でいう「推譲」の精神があるのではないでしょうか。先進国が持つ経済的な余力を経済的に苦しい人々に「譲る」ことができれば、ともによろこぶことができます。
 今月のことばは、商業のあるべき姿とともに、「譲る」ことの大切さが込められていると思います。「譲る」ということは自分のためだけを考えるのではなく、何か他人のためになることを実践することです。そして、次代を担う中学生、高校生には是非とも身につけていただきたい考え方です。

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