報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2019.8.1]

今月のうた・ことば

八月のことば 
 人の子たるものは、
  父母を安堵せしむることを第一とすべし

 今月のことばは、『二宮先生語録』から採りました。この本は尊徳門下の斎藤髙行によるものです。尊徳先生の一番弟子である富田髙慶の跡を継ぎ、現代でいう秘書のような仕事をしました。その7年間、間近で見聞きした師の言葉を記録したもので、富田髙慶『報徳記』と双璧をなす貴重な書物です。原文は格調高い漢文ですが、佐々井典比古氏により、平易な現代語に訳されています。

 人の子たるものは、父母を安心させることを第一とするがよい。父母を安心させようとするからには、心を正しくし、身を修めるがよい。心が正しく、身が修まっておれば、たとい他国に奉職して帰省する暇がなくても、父母は、表彰式があると聞けば喜んで、わが子もそれに加わっているだろうと思い、犯罪者があったと聞いても平気で、わが子ではないと思う。このようになれば孝行ということができる。ところが反対に、心が正しくなく、身が修まらないならば、父母は犯罪者があったと聞けば、わが子も罪を犯したのではないかと心配し、表彰式があると聞いても、どうせわが子ではあるまいと思う。このようなありさまでは、たびたび帰省しても決して孝行とはいえないのだ。

 父母を大切にする「孝」という徳目、そしてその思いを行動に移す「孝行」。尊徳先生が孝行息子であったというエピソードはいくつか浮かびますが、その最たるものは二宮本家の復興でしょう。これは父母だけではなく、祖先に対する孝を尽くしているからです。しかし、それを最も伝えたかった相手、喜んでくれるであろう両親は、すでにこの世の人ではありませんでした。孝行は目の前にいなくともできるものです。その第一が、親に心配をかけないことだと尊徳先生は言っています。登下校中に事故に巻き込まれないよう、注意すること。大きな病気や怪我をせずに、勉強やクラブに励むこと。自分と日々の生活を大切にすることもまた、孝行なのです。

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