報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2016.2.4]

今月のうた・ことば

二月のことば

  人道は勤るを以て尊しとし、自然に任ずるを尊ばず。
                        『二宮翁夜話』

 田畑には米や麦、茄子といった農作物と共に、雑草や害虫も育ちます。それは雑草や害虫を含めてすべてが天の創造物であり、天はこれらを等しく育てるからです。雑草や薬草、あるいは害虫や益虫ということばも、人間が人間の立場で言ったもので、天からすれば全て平等で何の区別もありません。
 田畑に水を引くために一生懸命作った堀も、時間の経過と共に土が崩れ埋もれていきます。人間もあれがほしいこれがほしい、あれをしたいこれをしたいと様々な欲望が生まれるのですが、いずれも自然なことです。もしすべてを自然に任せておくと田圃も畑も全て荒れ地に戻ってしまいます。人間も好き勝手な行動しかできず、秩序が保たれません。
 田畑や道路、建物などは全て人間が作ったものですが、これらを維持するには、どうすればいいのでしょうか。例えば、田畑に雑草が生えればこれを抜き去り、堤防に傷みが出ればこまめに補修し、堀が埋まってくると土を取り除くなど、何かに付け人間が手を加えなければなりません。
 二宮翁夜話にはこのようなことばもあります。
 天道は自然なり。人道は天道に随(したが)ふ(う)といへども叉人為なり。人為を尽くして天道に任すべし。人為を忽(ゆるが)せにして天道を恨むこと勿(なか)れ。
 秋の実りを望むのであれば、「なぜ雑草が生えるのだろう。」などと不平を言うのではなく、草抜きをして肥やしを入れて、十分に田畑の手入れをましましょう。木の葉が落ちるのは自然です。昼といわず夜といわず落ちてきて、地面には落ち葉がつもっていきます。「どうせ落ちてくるから」とあきらめるのではなく、一日一度は掃除するのが人間の勤めです。勉強やスポーツも、力を付けたい、上達したいと思うのであれば、自ら努力するしかありません。
人間の勤めとは、まず自分の欲望をコントロールすることです。あれをしたいこれをしたという欲望は、私たちの心の田に生えた雑草のようなものです。一生懸命勉強しようとしているのに、ゲームという雑草が生えてきます。「これをしなければ!」と思って準備しているのに様々な誘惑の雑草が生えてきます。準備していることが急ぎでなければ後回しにすることもできますが、そうでなけれは心の雑草ですから、ぐいっと引き抜きましょう。それには勇気、決断力、行動力が必要です。尊徳先生も「克己復礼~己に克って礼に復る」という論語の言葉を引用して自分の欲望と戦い、「我が心の米麦を繁茂さする」よう努力すること教えられました。
今月のことばでは、「人道は勤めるを以て尊しとし」とあり、自ら努力することの尊さを説いています。様々な欲望をきっぱりと断ち切って行動するところに尊さが生まれます。

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