報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2017.8.1]

今月のうた・ことば

八月のことば

天道は自然なり。人道は天道に随ふといへども、又人為なり。人道を尽くして天道に任すべし。

 天道とは自然の摂理・法則、人道とは人としてのあり方を言います。人間はもちろん自然の営みの中で生まれるものではありますが、尊徳先生は天道と人道を「元より区別判然なるを相混ずるは間違いなり」として明別していました。
 尊徳先生は、天からの恵みがいかに大きいものか、そして幼い頃からの相次ぐ天災により、自然がどれほどの力をもって流れているのかも、その経験から身に染みていました。自然の摂理を真摯に理解しようとすると同時に、その中で人がどのように生きてゆくべきかを考えたのです。曰く、「人道は勤めて人力を以て保持し、自然に流動する天道の為に押し流されぬようにするにあり」。天道は自然の法則であるから、任せておくと堤は崩れ、川は埋まり、橋は傷み、家も壊れていく。人道はこれに対して堤を築き、川を整え、橋を修理し、屋根を修繕して雨漏りのないようにする。人間として主体的能動的に労働し生産していく、その上で自然と調和をして生きることを述べているのです。また、尊徳先生の言う「天道」は自然現象だけを指しているものではありません。人間の心にもそれは及ぶとしています。「天道は寝たければ寝、遊びたければ遊び、食ひたければ食ひ、飲みたければ飲むの類なり」と、怠惰や欲望に流れるのも天道の一つだと言います。しかし人は自然の中に生きる鳥獣とは違う。人だからこそ「眠たきを勤めて働き、遊びたきを励まして戒め、食ひたき美食を堪へ」て明日へ、その先へと蓄えるべきである。これがまさしく人道なのだと。
 従うべき天道には従い、そうでない天道は人道に努めて悪しき流れに抗する。その調和をはかるのも人道の一つかもしれません。

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