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[2021.6.1]

今月のうた・ことば

六月のことば

「注文に載せられずといえども勤むる処なり」
 およそ事このごとくなれば、成就せざる事なし

 江戸時代の寺子屋で、教科書として用いられていた『庭訓往来(ていきんおうらい)』という書物があります。今月の言葉は、尊徳先生がこの『庭訓往来』のなかの一節について感想を述べている箇所から採りました。引用部分は「注文には載せられていないけど、必要かと思ってお送りしました」という文脈なのですが、これだけでは意味が分からないので、書名も含めて解説します。

「庭訓」とは家庭内での教育のことで、かの孔子がなかなか学問に身が入らない息子に庭先で教育した故事によります。「往来」とは手紙のやり取りのことです。「庭訓往来」は架空の人物同士の手紙のやり取りを通じて、子供に当時の一般常識や難しい語句を教えるものです。現代でいえば国語と社会科の教科書といったところでしょうか。冒頭の一節は相手に「客をもてなすのに必要だからこれらのものを用意してほしい」といって色々な食材を注文した返信の部分です。頼まれた方は、食材はもちろん、ろうそくや燭台や火鉢といった、注文には書かれていないものも用意してくれていました。頼んだ方は食材に頭がいっぱいで、調度品には気が回っていなかったのです。この部分に対して、尊徳先生は何事もこういう風に、頼まれた以上のことを心を尽くして務め励めば、志が成就しないことはない、といっています。「至誠」を教えるエピソードといってよいでしょう。

現代でも「頼まれごとは試されごと」という言葉があります。これは中村文昭さんというレストラン経営の実業家の言葉です。「相手の予想の上をいくようなアウトプットを出すことで、誰よりも信頼を勝ち取ることができる。頼まれごとはチャンスだと思って全力で取り組みなさい。」というメッセージです。家庭で、教室で、クラブで、様々な「頼まれごと」があると思います。はじめは面倒に思うかもしれませんが、そもそも一定の信頼があるからこそ頼まれるわけでもあります。一つ一つまごころを込めてやってみましょう。

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