報徳教育部(今月のうた・ことば)

[2015.12.1]

今月のうた・ことば

十二月のことば
    あせわずおこたらず
昔の木の実、今の大木、今の木の実、後世の大木なる事を、能々(よくよく)弁(わきま)へ(え)て大を羨(うらや)まず、小を恥じず、速やかならん事を欲せず、日夜怠らず勤るを肝要とす。

 「全ての道はローマに通ず(All roads lead to Rome.)」といわれる大帝国ローマも、その始まりは小さな都市国家でした。紀元前6世紀末にイタリア半島に建設された都市国家が、紀元前3世紀前半にイタリア半島のほぼ全域に広まり、その後に地中海全体を支配するようになります。最盛期には世界の人口のおよそ4分の1の人々がこのローマの支配下で暮らしたといわれます。都市国家から時間をかけて大きくなったローマ、まさしく「ローマは一日にして成らず(Rome was not built in a day.)」です。
 秋が深まり紅葉の季節となりました。今こうして野山を彩る木々は、何十年も、あるいは何百年も前に一粒の木の実が芽を出して、少しずつ成長した結果です。風雨や寒暑に耐え、また太陽の恵みを受け、地中の養分を吸収して、ようやく今日の姿になりました。
 スポーツの大会や文化活動のコンテストなどで優秀な成績を収めるには、日頃からたゆまず努力しなければなりません。一段一段階段を上っていくように日々努力を重ねることが大切です。報徳では「積小為大」と言いますが、大きな目標があれば、そこに至までの小さなステップを考え、この小さなステップを確実に進んでいかなければ目標を達成することはできません。
 江戸時代は天候不順により、飢饉が何度となく全国を襲いました。天明3年(1783)には浅間山が噴火し、その影響で東北地方は大飢饉となり多くの餓死者を出しました。現在の福島県相馬市、南相馬市にあたるところに相馬中村藩がありましたが、逼迫した藩財政を建て直し、疲弊した農村を復興するために報徳仕法が導入されました。相馬藩士である富田高慶と斎藤高行が尊徳翁から仕法を学び、のちに二宮尊徳四大門人に数えられるまでになりました。この二人が相馬仕法推進の原動力でした。報徳仕法による相馬の建て直しは成功し、その精神は今もこの地方に引き継がれています。
相馬市の市民憲章には、「報徳の訓えに心をはげまし、うまずたゆまず豊かな相馬をきずこう」とあります。「うまずたゆまず」とは「飽きていやになったり、怠けたりしないで」物事を続けることです。
今、努力を重ねることが将来の成功に繋がるのであり、努力の結果すでに成功した部分に目をやって羨んだり、なかなか進歩しないと嘆いたりする必要はありません。積小為大です。焦らず小さな一歩を積み重ねましょう。最後に尊徳先生の道歌を紹介します。

むかし蒔く木の実 大木と成りにけり 今蒔く木の実 後の大木ぞ

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